みさきのらくがき帳

ここはみさきさまの脳内だ

ファミマで買った芋けんぴ全然開かねーんだが!?

小さなころのわたしは、
周りの子よりも少しだけ要領が良い子だった。
少しだけ勉強ができて、少しだけ運動が得意で、だからみんなからは憧れの眼差しを向けられていた。
子どもながらに自分が子どもであることを自覚し、最大限にそれを活かしていた。
何事にも一生懸命になって、少し優れた結果を生み出して、周りからちやほやされる自分に自信さえ持っていた。

そんなわたしが憧れたのは、わたしにはない大人というものだった。

密かに想いを寄せたおやつの芋けんぴは、
わたし達の間では地味だった。それでも紛れもない、わたしにとっての大人の味だった。
世の中には、カラフルな彩りのお菓子があふれていたけれど、それでもわたしはこの味を選んだ。
美味しいものを美味しいと認める自分に
酔っていたところがあるのかもしれない。
そして、それが大人だと信じていた。



今になって思えば、
この陳腐な考えも可愛らしいものだ。

コンビニでお菓子を物色していたわたしは、
芋けんぴを見て当時の自分を思い出した。
あの頃の輝きは、もうわたしには存在していない。


ひさびさに手に取ったこのお菓子は
随分と質素で、なんのありがたみも感じなかった。

この子どもの味は、
いまのわたしには物足りない。
わたしは、いろんな味を知ってきたつもりだ。
果たしてコーヒーに合うのだろうか、それともお茶に合うのか、きっとお酒には合わないだろうな。
頭の中で起こした自問自答はありきたりでしかなかった。知識と経験は、想像力を乏しくしてしまう。
だから思い出したかったのかもしれない。小さなころのわたしが何を思ってこの子どもの味を楽しんでいたのか、ということを。


それから数日間、
わたしは芋けんぴとともに過ごすことになった。なぜなら、袋が開かなかったから。

開け方をいくつも知っているはずなのに。

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ひとつの開け方にこだわるのが、
子どものころのわたしだっただろうか。
だんだんと歯がゆくなってきたのは、
わたしが大人になったからか、それともまだ子どもだからか。

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もう子どものころのわたしには戻れない。
周りの子たちは、それほど能力が優れているわけではないわたしに憧れたりしない。
それでも、自分が特別だと思いたいのはわたしが大人になりきれないからなのだろう。
周りの子たちのキラキラしたやりとりを目にするたびに憧れずにはいられなくて、焦燥感がわたしを襲うばかりだ。そんなつまらない自分の考えに嫌気がさして、わたしは色々なものを避けてきた。

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全てを壊せば、辿り着けただろうか。
ようやく、目の前にある子どもの味に辿り着いても、そこにあるのはわたしの記憶の中の芋けんぴと相違なかった。

これが、子どもの大人の味。

ひどくつまらなくなってしまった、
子どものままのわたしが楽しめる味を、また探そうと思った。